オオバコの食物繊維で“絶好腸”

便秘解消、ダイエット効果、大腸ガン予防

印南 敏 編著 1996.04.26 発行
ISBN 4-89295-361-X C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


食物繊維の研究史

オオバコの食物繊維で“絶好腸”

始まりは「小麦フスマ」の研究から
米糠や小麦フスマを知らない人が多くなっています。それだけ豊かになって、精白米や精製した小麦粉が愛好されている証拠でしょう。
ところで、食物繊維の研究史を知る上で小麦フスマを抜きにすることはできません。小麦フスマは小麦を精製するときに出る小麦の外皮のことで、白いパンが作られるようになってからは家畜の飼料として使われています。
欧米では「医学の柤」といわれるヒポクラテスの時代から、この小麦フスマに便秘予防の効果があることが知られていました。しかし、「西欧型文明病」と繊維との関係が本格的に研究され始めたのは二〇世紀に入ってからのことです。
食物中の繊維が見直されるようになった契機は、イギリス人医師たちによる鋭い観察とたゆまざる努力と言ってよいでしょう。そのパイオニアはウォーカー博士とクリープ博士です。

ウォーカー博士とクリープ博士
東アフリカの英国植民地で診療活動していたウォーカー博士は、一九五四年アフリカのバンツー族に動脈硬化や心疾患が少ないことに気付き、その理由は高繊維、低脂肪の食事にあると発表しました。
また、イギリス海軍の軍医だったクリープ博士は、第二次世界大戦前から将兵達の便秘の治療に小麦フスマを使っていました
が、一九五六年、砂糖や白いパンなどの精製された糖質が、糖尿病や心臓病など多くの西欧型文明病の原因だと指摘しました。

「繊維仮説」
一方、東アフリカで三〇年間医療活動をしていたトロウェル博士も、やはり、動脈硬化症、虚血性心疾患、糖尿病、胆石、大腸ガン、腸憩室症、便秘などの西欧型文明病がアフリカには非常に少ないことに気がついていました。
そして、一九七一年、南アフリカの農村で原住民と白人の医療活動を行なっていたバーキット博士は「繊維の少ない食品、すなわち高度に精製された食品の摂取量が多いと大腸ガン発生の危険が高まる」という 「繊維仮説」を発表し、世界中で大きな反響を呼びました。

ダイエタリーファイバーの概念
こうして、食物繊維研究の父ともいわれるバーキット博士の仮説がきっかけとなって、医師や学者の間で食物繊維への関心が急速に高まっていったのです。
翌一九七二年にはトロウェル博士が初めてダイェタリーファイバー(食物繊維)という概念を提案しました。この概念は最初 「人の消化酵素の作用を受けない植物細胞の構造残渣」と定義されました。以来、先進国のみならず、世界各国で食物繊維の研究は急速に進行していきました。
わが国では現在「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化成分の総体」という桐山氏の定義が認められています。

文明病と食物繊維
バーキット博士らは、「西欧型文明病が発生するのは、環境条件や人種、遺伝によるものではなくて、食生活の違い、特に脂肪や食物繊維の摂取量の違いが原因ではないか」と指摘しました。文明病は同じ黒人でもアメリカなどの先進国に移住した人に多く、白人でもアフリカに住んでいる人にはあまり見られなかったからです。つまり欧米先進国では、わずか100年ほどの間に食事の内容が大きく変わってしまい、穀類は過度に精製されたものを食べるようになりました。しかも穀類を食べる量は豆類、根菜類とともに減少し、それにかわって動物性のタンパク質や脂肪、砂糖の摂取量が増えています。
それに対してアフリカの原住民は主食として精製していない穀類や芋類、豆類を多く食べ、食物繊維の非常に多い食事をしているというのです。
またバーキット博士はアフリカの農村の人々と白人達それぞれの食事と便量、食事をしてから排泄するまでの内容物通過時間の関係なども詳しく調べました。すると、食物繊維の多い食事をしている原住民は通過時間が非常に短く、便の量も一日に四〇〇〜五〇〇グラムと多くて柔らかいのに対し、動物性食品に偏った欧米人の便量は80〜100グラムと少ない上に固く、ひどいときは二週間も便秘をしてしまうことがわかったのです。




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