沙棘(サジー)の果実を搾ったジュースは、濃厚なオレンジ色をしています。それを初めて見たとき、私は瞬間的に「この飲物は抗酸化作用(※)が相当強いに違いない」と直感しました。
植物の濃いオレンジ色が、抗酸化成分の含有量の豊富さを示すことは、研究者のあいだでは常識だからです。実際に、私はその後の研究で、沙棘の強い抗酸化力を立証しました。
沙棘には、抗酸化成分を含めて約200種類の有効成分が含まれています。これは植物のなかでトップクラスの含有量で、さらなる未知の成分の存在も示唆されています。
なぜ、沙棘にそれほど多彩な有効成分が含まれているのでしょう。もちろん、私たち人間のためではありません。
沙棘はもっぱら、砂漠地帯や寒冷地、高山など、植物が生きるうえで非常に過酷な環境に分布しています。おそらくそうした環境にうまく適応し、力強く生育するために、長い時間をかけてさまざまな成分を身内に生み出していったと考えられています。
いずれにしても、多彩な抗酸化成分を一度に補給できる沙棘のような食品は大変貴重です。抗酸化成分は、種類によって体内で働く場所が違ったり、互いに助け合って作用するので、単独でとるより、複数組み合わせてとるほうが有利だからです。
また、沙棘の特徴として、摂取直後だけでなく、摂取後数時間たってから、再度、強い抗酸化作用が得られることが、私の研究で明らかになっています。これも複数の抗酸化成分を含んでいるからにほかなりません。
ただし、同じ「沙棘」という名の商品でも、沙棘のどの部分(果実、種子、葉)を原料にしているかで含有成分は大きく異なります。また、産地や種類・収穫時期・製造技術・保管法・運搬法などによっても、品質にかなり差がでてきます。
さらに、沙棘の有効成分は、果皮および種子由来のオイルに凝縮されていて、本来このオイルは、沙棘の果実を搾ったジュースにもたっぷり含まれています。ところが、市販の沙棘ジュースのなかにはオイルがほとんど含まれないものもあります。
このように、市場に出回っている沙棘製品は、メーカーによって成分内容に大きな差があるのが実状です。2005年には、沙棘の販売会社の1つが、特定商取引法上の違反行為(誇大広告など)で、経済産業省から業務停止命令を受ける不祥事まで起こりました。
沙棘本来のすぐれた健康効果を考えると、こうしたことで消費者の方々から疑いの目を向けられるのは大変悲しいことです。
そこで2006年、沙棘の信頼を回復すべく、良質の沙棘商品を扱っている企業が一丸となって立ち上がり、「沙棘協会」を発足。私も顧問の1人として参加し、よりよい沙棘製品の開発および流通に尽力しています。
本書の内容が、沙棘の「真」の姿を伝える一助となれば幸いです。