アレルギー・婦人病に効くヨモギ

民間療法が実証するヨモギの効用

伊沢 一男 著 1992.08.06 発行
ISBN 4-89295-002-5 C217 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


日本人とヨモギの長いつきあい

アレルギー・婦人病に効くヨモギ

「勃海国」の使者が薬効を伝来
ヨモギの薬効は、一二〇〇年ほど前、大陸から渡ってきた中国人によって日本に伝えられたといわれています。
当時の日本は、全国統一をなした大和朝廷が、異国の文化を取り入れることに躍起になっていた時代です。
折も折、中国東北部に勢力を持っていた「勃海国」の使者が、日本へ貢ぎものをたくさん携えてやってきました。
能登半島(金沢あたり)に上陸した勃海国の使者一行は、奈良へ向かう途中、伊吹山の麓を通っているとき、自国に野生している“薬草”、つまりヨモギを発見しました。
「わが勃海国に生えている“医草”と同じものじやないか」
興味をもった使者たちは通りかかった農夫に、日本ではその草をどのように利用しているかについて尋ねてみました。農夫いわく、
「草タンゴの香味ぐらいのものだなあ」
使者たちは、ヨモギの不遇にたいそう驚いて、さっそく薬効について説明をしたといいます。

唐の薬物事典『新修本草』にも紹介
勃海国の使者たちは、ヨモギの葉裏の白毛を使ってモグサとして使うことを伝授。いわゆる「灸」の方法を教えてくれたのです。
それは、6月ごろのヨモギの葉を採取して天日で乾燥させたのち、石臼で碾いて細かい粉にし、粉にならずに残った葉裏の白毛をふるいにかけて分け「灸」に利用するというものでした。
いまでも、高級なモグサのことを“伊吹モグサ”と呼びますね。その名の由来は、ここからきているのです。
とはいえ、最近のモグサは新潟県の上越市が産地の中心となっており、(80%以上)、実際に伊吹山で生産されるものはごくわずかとなってしまいました。
さて、伊吹山でヨモギの薬効を教えた勃海国の使者たちぱ、その後、目的地である奈良の都に参じて貢ぎものを献上した折、そこでも薬草としてのヨモギの効果を説いていったといわれています。
中国ではすでにその時代から、ヨモギの効能については全土に知れ渡っていたものと思われ、勃海国とは別に、六五九年に唐で出版された「新修本草」にも“艾葉”の名前で紹介されています。
「新修本草」は奈良時代、わが国に伝えられました。




その他の各種薬用植物関連書籍