糖尿病とダイエットに奇跡のサラシア

糖の吸収を抑制するアーユルヴェーダの秘薬

吉川 雅之 著 2003.09.12 発行
ISBN 4-89295-438-1 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


糖の吸収を必要最小限に抑える

糖尿病とダイエットに奇跡のサラシア

サラシアはブドウ糖には作用しない
さて、前項の実験から、ショ糖や麦芽糖を摂取しても、あらかじめサラシアをとっていれば血糖値の上昇が抑えられることが明らかになりました。
これはサラシアが、腸で糖の吸収を阻害することを示しています。
しかし同じ糖でも、実験で使ったショ糖や麦芽糖ではなく、ネズミに「ブドウ糖」を食べさせた場合は、サラシアを与えても血糖値はぐんぐん上昇します。
なぜブドウ糖には、サラシアの効果が期待できないのでしょうか。
答えは糖の構造にあります。
サラシアの効果がみられないブドウ糖は、ブドウ糖1つからなる「単糖」です。
一方、サラシアで効果がみられたショ糖と麦芽糖は、どちらも単糖が2つ結合した「二糖類」。
じつは二糖類以上の糖(※3)は、腸でブドウ糖に分解されてから体内へ吸収されるしくみになっていて、サラシアはまさにこの二糖類以上の糖がブドウ糖に分解される過程を阻害するのです。

α―グルコシダーゼを阻害する
サラシアは、二糖類以上の糖を分解する「α―グルコシダーゼ」という酵素の働きを阻害します。α―グルコシダーゼ阻害作用を生み出しているのは、サラシノール(別名ダスデス※4)とコタラノールという、サラシア特有の成分です。
サラシノールとコタラノールの構造は非常に珍しいもので、近畿大学薬学部の村岡修教授らのグループとの共同研究によって決定することができました。このタイプの化合物は、今日に至るまでサラシノールとコタラノール以外には発見されておらず、世界で初めて私たちが突き止めることに成功した骨格の化合物です。
ちなみに、糖尿病の治療薬のなかにもα―グルコシダーゼの阻害活性をもつものがあります。
アカルボースはその代表ですが、サラシアに含まれるサラシノールやコタラノールには、その医薬品のアカルボースと同等か、それ以上のα―グルコシダーゼ阻害活性が確認できています(上段の図)。

T型糖尿病に対する効果も期待?
このほか、サラシアがインスリンの分泌を促したり、代理として働く可能性を示唆する実験データも出ています。
富山医科薬科大学の研究グループの報告ですが、糖尿病ネズミ(膵臓に障害を与えてインスリンの分泌がないラット)にサラシアの抽出エキスを与えたところ、血糖値の降下がみられたというのです。
インドの研究者が手がけた実験でも、同様の成果がみられています。
これらの報告は、U型糖尿病はもとより、インスリンの分泌が途絶えたT型の糖尿病にもサラシアが有効である可能性を示しています。実際にそれを裏づけるように、サラシアに含まれるマンジフェリンという成分がT型糖尿病に有効だったという報告も出ています。
ちなみに、マンジフェリンは、サラシアのもう1つの有効成分であるポリフェノールとともに、弱いながらα―グルコシダーゼ阻害作用もあります。



※図表省略




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