熱帯産“薬用果実”ノニの熟成パワー

ガン予防から抗菌・鎮痛作用、ダイエット、美肌まで

西垣 敏明 著 2003.06.12 発行
ISBN 4-89295-437-3 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


いろいろあるノニの伝統的な利用法

熱帯産“薬用果実”ノニの熟成パワー

インドネシアから各地域へ広がる
ノニの植生が原産地インドネシアから他の地域へと広がり始めたのは、今から二〇〇〇年ほど前の頃だと思われます。幻の海洋民族といわれる「ラピュタ人」が、他の東南アジア原産の食物、たとえばバナナやマンゴー、タロイモなどと一緒にノニを太平洋の島々などに伝えたものと考えられています。
ノニは伝わった地域ごとにさまざまな名称で呼ばれることになります。たとえば、太平洋の島々においては「ノヌ」や「ノノ」などと呼ばれています。本書で使用している「ノニ」というのも、その中の一つです。
また、インドネシアにおいても地域や民族の違いにより、「メンクド」や「パッチェ」「ティバ」などと、いくつもの名称が存在しています。
わが国では、沖縄八重山諸島のものが、「ヤエヤマアオキ」と呼ばれています。

インドネシアの伝統治療薬「ジャムゥ」
ノニは、古くからインドネシアにおいて食料や医薬品として利用されてきました。紀元前の時代からインドの強い影響を受けていたインドネシアでは、インドのアーユルヴェーダ医学(インド古代からの伝統医学)を基礎として、薬学・医学の分野で治療薬体系「ジャムゥ」が確立されていました。
その伝統治療薬「ジャムゥ」の中の一つとして、ノニはおそらく二〇〇〇年以上前から、さまざまな症状や疾病に対して使用されてきたと考えられます。
また、栄養バランスにすぐれたノニ果実は、インドネシアでは仏教僧により栄養補給の目的で、太平洋の島々では飢餓時の代用食として利用されていました。

染料としても使用される
ノニの幹や根の皮からは、赤や黄色の染料がとれます。インドネシアでは古くから、布や漁網、帆などの染色にこの染料が使用されてきました。また、有名な蝋染めバティック(ジャワ更紗)の染料としても使われています。
ノニの染料で染色したものには耐久性があるうえに、シロアリなどによる被害を受けないといわれています。
しかし、十九世紀末〜二十世紀初頭にかけての合成染料の登場で、天然染料としてのノニの需要は著しく減少してしまいます。その結果として、インドネシアでのノニ栽培は衰退の一途をたどることになりました。

再びノニに注目が集まる
合成染料の登場に加え、近代医学・薬学の発展に伴い合成医薬品が普及し始めたことや、若年層を中心とする人たちにノニ果実の独特の匂いが嫌われたことなどにより、薬用植物としてもノニはすっかり影が薄くなってしまったのです。
ところが、近年になって合成医薬品の安全性が問題視され、医療における健康食品の有用性が見直されるようになると、再びノニに注目が集まるようになりました。しかし、インドネシアでは以前からノニの研究が盛んに行なわれており、「ジャムゥ」の医薬品として、その薬効を政府が公認する薬用植物となっているのです。
インドネシアでは、ノニのジュースやカプセル、粉末などが治療薬や育毛剤として利用されており、またノニの化粧品も売られています。


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