細胞の栄養不足が病気を促す
第一章で紹介した、イチョウ葉エキスの「血管を健全な状態に回復して血液循環を正常化する」働きについて、もう少し具体的に説明してみましょう。
私たちの身体は数十兆個におよぶ細胞で構成されています。いわば細胞は人体の生命活動を支える基盤といってよく、何らかの原因でそれら個々の細胞の働きが弱くなると身体は基盤から総崩れになって、身体機能にさまざまなトラブルが生じてきます。これが病気のはじまりです。
病気の発生を防ぐためには、細胞に随時十分なエネルギー（酸素と栄養素）を供給し、その働きを高めておくことが絶対条件となります。
このとき、細胞にエネルギー供給をしているのは血液ですが、その血液を全身の各細胞にスムーズに送り届けるためには、血管が健全でなくてはなりません。血管が老化して血流がとどこおると、細胞がエネルギー不足で活動が弱まり、病気や老化を促す原因になってしまいます。
俗に「人は血管とともに老いる」といわれますが、まさしく血管の健康状態が、その人の寿命を左右するといっても過言ではないのです。
動脈硬化の進行は突然死の原因にも
老化の進んだ血管とは、すなわち「動脈硬化」の進行した状態です。
その様子は、古くなったゴムホースを思い浮かべていただければいいでしょう。ゴムホースが古くなると、内壁にゴミや水アカが付着してホースの筒が硬化してもろくなり、水の流れが悪くなります。同様に、人体の血管も、加齢とともに血中成分（コレステロール・中性脂肪など）がどんどん付着して血管を細く硬くし、血液循環を阻害していきます。
動脈硬化は老化現象の一つですから、三〇才を越えれば誰しも避けられない症状ですが、その進行が早まると非常に危険です。血液の流れが悪くなって全身の細胞の働きが低下するほか、硬くなった血管の筒に血中成分が詰まって｢血栓｣を形成する原因にもなります。そうなれば心筋梗塞や脳梗塞といった、生命をあやぶむ症状を引き起こす危険性もでてきます。
血中コレステロール値が正常に！
動脈硬化の進行を促す大きな要因としては、まず第一に血中コレステロールの上昇があります。
コレステロールは、ホルモンや胆汁酸の生成に不可欠な成分ですが、血中に必要以上に増えると血管壁に付着して、動脈硬化を促す危険因子になるのです。
イチョウ葉エキスには、血中のコレステロール値を正常化する働きがあります。
中国の新彊医学院で行なわれた臨床調査を紹介してみましょう。
《調査内容》高コレステロール血症（血中コレステロールが増加している症状）の患者さん六二人にイチョウ葉エキスを投与しその経過を調べました。
《結果》イチョウ葉エキス投与から三〇日後には、三三人の患者さんの血中コレステロール値が二五〇㎎／dl以下に低下しました。残り二九人のうち十九人も、イチョウ葉エキスを投与する前にくらべて十五～二〇㎎／dlの低下をしめしたそうです。
血小板の過剰凝集も血流悪化の原因
血液循環を悪くするもう一つの大きな原因が、血小板の過剰凝集です。
血小板は、傷口に凝集して止血する働きをもつ血中成分ですが、ときに血液中で過剰に凝集することがあります。そうなると血液がどろどろしはじめて血流が悪くなったり、血管壁に付着して動脈硬化の進行を招きます。最悪の場合には、血小板の固まりが血管に詰まって「血栓」を形成する危険因子になります。
この血小板の過剰凝集の抑制にも、イチョウ葉エキスは有効です。血小板の初期の凝集速度を遅らせる働きと、さらに血小板の固まりを溶解するスピードが、イチョウ葉エキスの投与で速まることが、モルモットの血漿を使った実験で明らかにされています。
また、オーストラリアの研究者は、人を対象に次のような調査を行なっています。《調査内容》頚動脈に動脈硬化が認められる二四人の患者さんを二群に分けて、それぞれ故意に血小板凝集を起こさせ、一方の群にだけイチョウ葉エキスを投与して、両群の血小板凝集を比較しました。
《結果》調査開始直後は両群とも血小板の凝集値が上昇しましたが、一日後、対照群の凝集値は高いままだったのに対して、イチョウ葉のエキスを投与した群の患者さんは、実験前の凝集値に戻っていました。
血管壁の平滑筋の収縮を鎮める作用も
血液の流れるスピードは、血管壁を構成している平滑筋にも影響されます。平滑筋が必要以上に収縮して、血管の内腔が狭くなると、当然ながら血液の流れる速度は大幅にダウンしてしまいます。
イチョウ葉エキスには、平滑筋のけいれん（収縮）を鎮めて、血管を拡張する作用もあります。
動脈硬化が抑制され、そのうえ血管を拡張する効果も得られるとなれば、血液循環の改善に、イチョウ葉エキスは極めて有効といえましょう。