北国の秘薬エゾウコギ

ストレス・疲労回復・免疫増強に抜群の効果

山岸 喬 著 1996.02.03 発行
ISBN 4-89295-358-X C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


日本では北海道の東部にのみ自生する

北国の秘薬エゾウコギ

エゾウコギとはどんな植物?
エゾウコギとは日本名ですが、ロシアではエレウテロコック、そして中国では刺五加といわれています。
自生するのは、シベリア、中国の東北地方、朝鮮半島、そして北海道の北見、足寄、帯広などの地域だけです。
かたちは、日本各地に見られるウコギに似ています。ただ、ウコギよりも茎にトゲが密生しており、葉もウコギより大型です。
葉は五枚の小葉が集まる掌状になっています。
よく育ったものなら、三〜五メートルほどの高さになる低木で、冬には葉を落とします。
また、七月に、ヤツデの花を小さくしたような白い花を咲かせ、九月頃には黒い実を結びます。

アイヌ民族は悪疫を祓った!?
一般的にはまったく無名だったエゾウコギですが、実はアイヌの人たちは昔からこれを神聖な植物として珍重しています。
アイヌの人たちは、経験的にエゾウコギの薬効に気がついていたものと思われます。
また、全体にトゲが密生していることから、悪霊を遠ざける植物として門のところに吊るしたり、まじないのようなことにも使っていたようです。
こんなふうに、北海道の東部ではしばしば見かける珍しくもない植物のひとつだったのです。

開拓民には嫌われもの
アイヌの人たちにこそ珍重されましたが、明治以来の北海道開拓民には、このエゾウコギはむしろ嫌われものだったのです。というのも、葉や茎には鋭いトゲが密生しているため、畑を切り開くときにケガをすることも多かったからです。
しかも、焼き払ったあとも再生力が強いので、地下からすぐに芽を出してきます。このため、エゾウコギは根こそぎ堀り起こして、焼き捨てていたのでした。
嫌っていたのは、開拓民だけではありません。このトゲのために、鳥やヘビなどからも敬遠されたようです。このため、エゾウコギには『トリトマラズ』とか、『ヘビノボラズ』といった異名さえつけられたのでした。
しかし、薬効が知られるようになった最近では、逆に栽培までおこなわれるようになりました。
種子が芽を出すまでは丸2年ほどかかるのですが、あとは順調に生育し、3〜4年でかなりの高さまで伸びます。
また、皮肉なもので、薬効があるとわかったら、逆に自生するエゾウコギを採集・伐採していく人も増え、道路近くの木はむしろ減りつつあるようです。
人間というのはなんとも身勝手なもので、こうした優れた薬効のある植物とは上手に共存を図っていきたいものです。




その他の各種薬用植物関連書籍