ササのパワーは多糖類にあり
ササの多糖類を説明するには、まず糖類の簡単な説明が必要でしょう。
糖類は、A単糖類、B少糖類、C多糖類に分けられます。Aはブドウ糖、果糖などをいいます。その単糖が数個結合(グルコシド結合)したものがBの少糖で、白砂糖やグラニュー糖があります。そして単糖が多数結合し重合したのがCの多糖類で、デンプンやグリコーゲン、セルロースなどがあります。
ササに含まれる多糖類ではセルロースが一番多く、構造支持の役目をしています。
植物はそれぞれに個有の多糖類をもっていますが、それは植物にとってのエネルギー源みたいなものもあります。人間でいえば細胞に貯えられた栄養分といったところです。
ササ多糖類アラボキシラン
ガンに効いたのはどうやらササ多糖類の“アラボキシラン”ということがわかりました。アラボキシランというのは単糖のアラビノースとキシロースが結合してできた多糖類です。
そもそもアラボキシランの対ガン効果が判明したのは、ヤクシマヤダケ(屋久島笹と呼ばれている)というササのエキスでした。
私は鹿児島県のヤクシマヤダケの糖分と、北海道に一番多くあるクマイザサの糖分とを比べてみました。すると、とてもよく似ているのです。
そこでクマイザサのエキスを造って、ガン患者に飲んでもらいました。するととてもよく効くといって喜ばれました。そして有効成分がアラボキシランという多糖類であることが次第にわかってきました。
そしてクマイザサについては、その年に出た新しい葉と、雪の下で冬を越した旧葉とを比較してみましたが、成分の傾向にほとんど差のないこともわかっています。
クマイザサ葉抽出物の糖構成(%)
石灰乳抽出 | 温水抽出 | ||
混合葉 | 新葉 | 旧葉 | |
中性糖 | 9.0 | 7.0 | 12.8 |
グルコース | 5.9 | 4.0 | 8.7 |
ガラクトース | 1.1 | 0.7 | 1.1 |
マンノース | 0.5 | 0.7 | 1.1 |
キシロース | 0.6 | 0.5 | 0.6 |
アラビノース | 0.4 | 0.6 | 0.5 |
リボース | 0.3 | 0.3 | 0.2 |
ラムノース | 0.2 | 0.2 | 0.6 |
還元糖 | 11 | 11 | 16 |
酸性糖 | 2.0 | 3.2 | 2.5 |
加水分解残渣 (リグニン) | 11 | 17 | 26 |
免疫力を賦活するササ多糖類
ササの多糖類がガンに有効なのは、多糖類自体がガンを退治するというよりも、多糖類による免疫賦活作用による結果だと後の研究で明らかになってきました。
つまり、ササ多糖類によって抵抗力をつけた細胞の力、いうなれば“自然治癒力”がぐっと向上したことで、ガンの攻撃を退ぞけられるようになったということです。
一般にガンの治療には患部を切りとったり、放射線で焼いたり、薬で破壊したりする方法が使われています。
一方、多糖類による療法は、本来人間のもっている病気を治す力を強めて、間接的にガンを治す東洋医学的な方法といえます。
ガン患者が“放射線治療”を受けると、副作用のために苦しむことがよくあります。私は放射線治療を受けて苦しんでいる方にササエキスを所望されて、飲んでもらったところ、とても楽になったと言って喜ばれました。
これは外科手術、放射線治療、化学療法のスケジュールと免疫賦活多糖類投与のタイミングが適合した場合、ガンに対して有効であると考えられていることと一致しています。
メスを使った西洋的医療と、自然治癒力を高める東洋的療法のいいところだけを取り入れた治療をすれば、ガンはより高い確率で治すことができることでしよう。
ササ以外の多糖類
きのこを煎じて飲むと体に効くと昔からいわれているように、カワラタケの“クレスチン”、シイタケの“レンチナン”、スエヒロタケの“シソフイラン”などのきのこ類や、ササ以外のイネ科植物の多糖類にも同様の効果が見られ、研究が進められています。
しかし、ササのように、季節を問わずどこにでもあって、誰もが簡単に利用できる材料はほかには見当たらないでしよう。
ササは日本国中至るところに豊富にあって、よほどの自然破壊と乱穫をしないかぎり、みんなで利用できる極めて有用な植物です。まさにすばらしい森からのおくりものです。邪魔物扱いせずに、うまく利用していきたいものです。