アーユルヴェーダの伝統薬草バコパで心の病に克つ

不眠症・不安障害を癒やし、脳を活性化するハーブの力

矢澤 一良 著 2003.12.28 発行
ISBN 4-89295-441-1 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


脳を元気にするバコパの5つの働き

アーユルヴェーダの伝統薬草バコパで心の病に克つ

@活性酸素の害を防ぐ「抗酸化作用」
バコパの主成分であるバコサイドは、多方面から健脳効果を発揮します。なかでも注目したいのが、有毒な活性酸素を消去する抗酸化作用です。
脳内に活性酸素が多量に発生すると神経細胞がやられてしまうことは17頁で述べました。ところが、実験動物にバコパの抽出物を1〜3週間与えると、脳の「前頭葉」「海馬」「線状体」といった部位の抗酸化酵素の活性が上昇することが報告されています。
これらの部位はどれも、不安などの情動や記憶力に関係の深い場所。バコパの投与でそれらの部位の抗酸化活性がぐんと高まったというわけです。

A神経細胞の成長・修復を助ける作用
バコパは、脳の神経細胞の成長や修復を促す作用もあります。神経細胞は互いに直接つながっていないので、おのおの細胞体を中心に四方八方に突起を伸ばし、その先端(シナプス)で「情報伝達物質」をやりとりしながら、脳内の情報伝達を行なっています。
突起のうち、たくさんある短いものは「樹状突起」と呼ばれ、隣接した神経細胞から絶えず情報伝達物質をキャッチしています。一方、ひときわ長い1本の突起は「軸索」といい、情報伝達物質を送り出す役目をしています。
これらの突起は、より本数が多く、より長く伸びているほうがアンテナ機能が高まり、情緒の安定や、記憶・学習能力の向上に有利となります。
バコパに含まれるバコサイドは、樹状突起の成長に必要な酵素(リン酸化酵素)の働きを助ける作用があります。この作用が、活性酸素などで傷ついた樹状突起の修復・再生に役立つのです。

B伝達物質のやりとりを円滑にする作用
バコパは、神経細胞の突起の成長を助ける一方で、樹状突起や軸索の先端(シナプス)の働きを高めます。
突起がいくら伸びたり増えたりしても、先端のシナプスに異常があると情報伝達物質をうまくやりとりできません。
バコサイドは、樹状突起や軸索のシナプスの機能を正常化し、情報伝達物質の送受信を円滑にする作用もあるのです。

C脳の炎症を抑える作用
脳で炎症が起こると最悪の場合、神経細胞が大量に死滅します。子どもの発熱による脳障害はその最たるもので、大人では痴呆症の引き金にもなります。
脳や体に炎症を起こす元凶は、プロスタグランジンと呼ばれるホルモン様物質ですが、バコパはこの炎症物質の体内合成を阻害するといわれています。
また、ほかの炎症物質(ヒスタミンなど)を抱えている細胞内のリソゾームの膜を安定した状態に保ち、炎症物質が不用意にこぼれ出ないようにする働きもバコパには期待されています。

D酸素の利用効率を高める作用
バコパの摂取は、酸素濃度の低い状況での生存率を高めるという報告があります。


※図省略

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